MLBは来年の2016年に140年という区切りを迎えるが、近代アメリカ野球において2人目の「スイッチ【ピッチャー】」がメジャーでデビューした。
彼の名はパット・ヴェンディッティ。彼は2008年にヤンキースから2度目のドラフト指名され入団(1度目は入団しなかった)。その後マイナーでキャリアを積んでいくわけだがその間に右肩を何度か故障している。
2014年にアスレチックスとマイナー契約を結び、迎えた今シーズン2015年6月5日のレッドソックス戦の7回裏にメジャー初登板を果たす。
冒頭で「スイッチ【ピッチャー】」は2人目と書いたが、最初の「スイッチ【ピッチャー】」は90年代に活躍したグレッグ・A・ハリス。しかし703試合に登板したハリスはほぼ右投げでメジャーでの登板を終えた。彼が【左投手】になったのは彼の最後の登板となる1つ前の登板であった。つまりハリスは厳密には「スイッチ【ピッチャー】」とは言えないかもしれない。
ハリス投手の前になると1880年代まで遡ることになる。この頃はグローブをはめずにプレーしていたため現代よりも多くの「スイッチ【ピッチャー】」が存在した。
この頃のルールはどうかわからないが、パット・ヴェンディッティがプロデビューした2008年6月19日の登板をきっかけにルールが公式に作成された。
その名も「パット・ベンディット・ルール(俗称)」。これは「スイッチ【ピッチャー】対スイッチ【ヒッター】」間の対戦におけるルールである。
初登板を迎えたその9回に「スイッチ【ヒッター】」のラルフ・エンリケス選手と対戦を迎える。
この打席で球場の観客はまるで「マンガ」のようなショーを目にすることとなる。当初左投げで準備していたヴェンディッティだが、エンリケスが右打席に入ったのを見て右にスイッチ。それを見たエンリケスが左打席にと、1球も投じず繰り返すことなんと5分間「コント」を演じた。
そこでついにヴェンディッティ投手が審判に抗議。エンリケスに先にバッターボックスに入るように指示された。右打席に入ったエンリケスに対しヴェンディッティはグラブを左手に持ち右投げで見事三振に打ちとった。
これをきっかけに「パット・ベンディット・ルール」が作られ同様のルールが日本でも2010年に作られた。
ルールの概要は次の通りである。
投手は球審、打者および走者に、投手板に触れる際にどちらかの手にグローブをはめることで、投球する手を明らかにしなければならない。
投手は打者がアウトになるか塁に出るか、攻守交代になるか、打者に代打が出るか、もしくは投手が負傷するまでは投球する手を変えてはいけない。
投手が負傷したために同じ打者の打撃中に投球する手を変えれば、その投手は再び投球する手を変えることは出来ない。
投球する手を変えた場合は準備する投球練習は与えられない。投球する手を変える場合は球審に明瞭に示さなくてはいけない。
ちなみにパット・ヴェンディッティ、両打ち、つまり「スイッチ【ヒッター】」である。
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